ロバート・クリフトン卿Side

2/6
前へ
/207ページ
次へ
 母のクリフトン伯爵夫人は、ため息をついて私に説教をし始めた。母の右手には紅茶のカップの華奢な持ち手が時折握られ、母は口にその花模様の描かれたカップを運ぼうとするたびに、次の小言を思いつくようで、カップの持ち手を右手に持っては、またお茶を飲まずにカップをソーサーに戻すという行動を繰り返していた。  私も許されるならば、ため息をつきたい。  私が母が選んできた令嬢との婚約を断ったのでこうなったのであって、自業自得ではある。母が話をまとめてきた縁談をなかったものにするのはこれで18回目だ。  私には心に決めたお方がいる。  私は強い女性が好きだ。深窓の令嬢などには一切興味がない。彼女は褐色の美しい髪を持ち、輝くようなエメラルドの瞳でエクボを見せて笑い、私の冗談にもコロコロとよく笑ってくれるお方だ。その方の存在が私の心を捉えて離さない。  唇を真一文字に結び、真剣な表情で王子と獣の間に勇敢に飛び込むようなお方だ。だからと言って、跳ねっ返りの令嬢でもなく、筋骨隆々の体の大きなガサツな令嬢といういわけでもない。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

384人が本棚に入れています
本棚に追加