戸惑い スティーブン王子Side

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 僕は……あり得ないことをしでかした。  気づいた時には無我夢中だった。目の前にとんでもなく可愛らしく魅力的な女性がいた。女性のドレスは僕が脱がしてしまったようだ。  僕は彼女を本能のままに、欲望のままに愛撫して甘い嬌声をあげさせていた。彼女が顔を火照らせて潤んだ瞳で僕を見つめるさまに、何か僕の奥の方で火のような熱いものが湧き上がり、僕の行動を止められないものにしていた。微かに表情を色っぽく歪めて甘い声で喘ぎ、乱れるさまを見ることがとてつもない幸福感を僕に与えた。  それが第二聖女のフランソワーズだとは気づいていなかった。彼女が一糸纏わぬ姿で乱れて僕の愛撫を受け入れて(いや、十分逃げようと悶えられた気がするが……)体をくねらせて色っぽくよがる様を見て、心の奥底から「この人だ」という声が聞こえた。  この人?  何が?  僕が薬を盛られて好きなように操られる危険も、好きでもない令嬢にべったりしつこく言い寄られる危険も、宰相や高位貴族の思うがままに操られるリスクも犯すことなく、完全に自由でいられる条件を満たす人が、目の前にいたのだ。  彼女は王子である自分が薬で苦しむ様をなんとか身をもって制しようとしていただけだ。その忠誠心から一種の事故が起きたのだ。  僕は彼女がそばにいることについては、全然嫌ではない。
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