戸惑い スティーブン王子Side

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 朝早くに彼女を乗せた馬車がニーズベリー城に到着してきた時、不思議な思いが僕の胸に去来した。  ――あぁ、次の女主人がようやくこの美しいニーズベリー城に登場したんだな。  完全に愛のない結婚だろう。  だが、政略結婚なんてほとんどがそうだ。  どう考えても、第二聖女フランソワーズと僕の間には愛がない。  彼女は僕が意識混濁した状態で彼女を抱いてしまった仕打ちに、猛烈に怒っていた。  でも、一つだけ今朝分かったことがある。  フランソワーズについて僕は嫌いじゃないし、彼女を大切にしたいとすら思った。僕を振った第一聖女のヴィラ以外で、僕が初めてそう思った女性はフランソワーズだけだ。  結婚相手としては、今の僕にとってはフランソワーズは完璧だ。  何より可愛いと思える。  ――可愛いく見える?  僕は自問自答しながら、腕の中で意識を失った煤だらけのフランソワーズを豪華な客室のベッドに運んだ。  そっと気をつけて彼女を起こさないようにしてベッドに寝かせた。  褐色の髪の毛をそっと撫でて、髪の毛についていた燃えかすのようなものを取った。 「君が無事で本当に助かった」
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