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都のブルク家の贅沢な邸宅の住人は、ゾフィーお嬢様付きの侍女モニカの悲しげで恐怖を感じる悲鳴で朝早くに叩き起こされた。私も例外ではなかった。
声の方向に慌てて駆けつけた皆の目には、ゾフィー令嬢の部屋のベッドに残る血痕を見て、ダークブロンドの髪の毛を振り乱しているモニカが映った。ゾフィー令嬢は置き手紙を残して、姿を消したのだ。
屋敷中が大騒ぎになった。叩き起こされたブルク辺境伯の旦那様も、ブルク伯爵夫人の奥様も慌てた様子ですぐにやってきて、侍女のモニカを質問攻めにした。
「この血痕は月のものではないと言うのだな?」
「はい……お嬢様のタイミングは違います」
「あなたっ!ゾフィーは一体……」
「きゃあっ、奥様っ!」
「しっかりなさってくださいましっ」
奥様はふらりと倒れかけた。慌てて侍女や従者やブルク伯爵が抱き抱えて夫人をベッドに運んだ。
「クリスティーネ、お水をっ!」
「はい、ただいま!」
「それからルイスはお医者様を急いで迎えにやってくれ」
「かしこまりました、旦那様」
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