リーズベリー城での最初の1日

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「はい、髪の毛を特別に美しく整える洗髪料をご用意しております。極秘のレシピで作られております。代々、貴族の間に伝わるレシピでございますわ」 「そうなのね。では……」 「髪の毛だけでも洗うお手伝いお手伝いをさせていただきますね!」 「はい、お願いするわ」  後でその極秘のレシピを確認しよう。何か知られていない薬草の効能や、普段使っているものを掛け合わせて特別な効果を発揮するのを利用して、それらを極秘に代々秘伝のレシピとして貴族間で伝え合っているのは、知られていることだ。  私は全てを脱いでお湯の中に身をつけた。  気づけば私が身につけていたものはススらだけだった。ススを見ると落ち込み、悲しくなる。  ――もう、何もかも洗い流そう。  私は温かい湯の中に身を入れて王室御用達の石鹸で洗った。厳しい王室基準を満たした石鹸は、香りもさりげなく上品で、洗い上がりが非常に素晴らしかった。ミルセイ石鹸と呼ばれる大人気で最高級石鹸だ。  ――まるでお姫様のよう。 「失礼致します」  アガサがさりげなく浴室に入ってきた。私の髪の毛を優しく静かに洗い始めた。うっとりするような心地だ。洗髪料の香りはイマイチだが、効果は凄そうだ。
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