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髪の毛も洗い立てられ、アガサが布で水気を拭き取り、用意された素敵なドレスに着替えたところで、数人の侍女が現れて、アガサと一緒に風を送ってある程度髪を乾かしてくれた。
「皆さん、そんなにしてくださらなくても。失礼」
私はスキルを使って一瞬で髪の毛を乾かした。貴族の間に極秘で伝わる洗髪料は効果的面で、私の髪の毛は艶々になっていた。
「な……なんとっ!」
「すごいですわ」
アガサを始め、侍女たちはとても驚いたが喜んでくれた。
「皆さんも、何かを乾かして欲しい時はご遠慮なく。湯はなかなか用意できないので、大変助かりました」
「そんな。私どもは皆、フランソワーズ様付きの侍女でございます。何なりとお申し付けくださいませ。これからご結婚までは結婚式の準備などでお忙しいとは思いますが、精一杯お仕えさせていただきます」
私は一瞬あっけに取られた。そうだった。私は王子と結婚するのであり、アガサを始めとする真面目そうな侍女たちは今日だけの侍女でわなく、これからしばらくお世話になるのだ。
この胸のときめきは、密かにお慕い申し上げていた王子と結婚することに対するときめきだろう。
胸の痛みは、王子と私の間には愛がないという秘密の契約婚をすることに対する痛みだろう。
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