リーズベリー城での最初の1日

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 私は慌ててアガサの顔を困ったように見つめた。しかし、アガサはグッと身を寄せてきて私にささやいた。 「今のフランソワーズ様は完璧に準備が整っております。素敵です」  私は顔が赤くなったが、覚悟を決めた。契約は契約だ。全うしなければならない。 「どうぞ」  私は王子を出迎えるために立ち上がって部屋の扉の方に歩いて行った。  私の声を聞いたスティーブン王子は部屋に入ってくるなり、ドアのそばに控えていた私を見つめて一瞬固まった。  その後、なぜか真っ赤になり横を向いて何かをぼそっとつぶやいて、さらに真っ赤になった。  私の格好がおかしいのかと思って、私は唇を噛み締めた。 「あの、こちらのお部屋をご用意いただきまして誠にありがとうございます。あかげさまで湯も浴びました」 「そ……そうか。良かった。衣装が間に合って良かった。とてもよく似合っている。侍女を務めている者はアガサという名だな?」  スティーブン王子は慣れない褒め言葉を使われることに真っ赤になってらっしゃっているようだ。侍女のアガサの方を急にくるっと振り向いた。 「はい」  アガサが返事をすると、スティーブン王子は予想もつかないことを言った。
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