リーズベリー城での最初の1日

8/11
前へ
/207ページ
次へ
「よくやった。とても似合っている。美しいし可愛いと思う。もっと多くの衣装が必要だ。この調子で揃えてくれ。私の妻となる人が心地よい暮らしができるととても嬉しい」  スティーブン王子は顔から火が出そうなほど火照った顔で、アガサに言った。それを聞いたアガサは両手を振り絞らんばかりに固く握りしめて、感動した面持ちで、私とスティーブン王子の顔を忙しく見比べて、満足そうに微笑んだ。 「かしこまりました!殿下!」  アガサを始め、そばにいた侍女たちは「きゃあっ!」と悲鳴が聞こえそうなぐらいに盛り上がっている。  ――皆さん、残念ながらこれは演技なのよ。  私は侍女たちに説明したかったが、契約婚のために王子に同調した。 「ありがたいですわ、本当に」  恭しくお礼を言った。スティーブン王子は私の顔を見るとポッとまた顔を赤らめて、横を向いてしまわれた。  ――どうされたのかしら。  突然、すっとスティーブン王子が私に近寄り、私の顔をのぞき込んだ。王子の顔は赤く染め上がり、瞳がキラキラと煌めいていた。私の心臓はドクンと音を立てた。  王子はポケットから何かの細長い箱を取り出して、その箱を開けて私に見せた。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

386人が本棚に入れています
本棚に追加