リーズベリー城での最初の1日

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 私は王子の瞳を見つめた。彼が何を考えているのかさっぱり分からない。しかし、私は契約に従わなければならない。 「大変、ありがたく思います」  私はあの何もかも脱がされて愛撫された時のことを頭から振り払いたいのに振り払えずに、心の動揺が出たままの表情で王子に微笑んだ。  スティーブン王子が私の顎をそっと指で撫でた。  あぁっん  思わず声をあげてしまい、スティーブン王子は「まずい」と一言だけ言って、横を向かれた。  赤くなって咳払いをされたスティーブン王子は、私に早口で説明した。 「最初の贈り物は、君の瞳に合わせて選んだものだ。とてもよく似合っているからこれからもつけて欲しい」 「わかりました」  私は侍女たちが幸せそうな表情で、私とスティーブン王子のやりとりを見つめているのに気づいていたので、素直にうなずいた。 「そうだ、食事はまだですね?一緒に食べましょう」  スティーブン王子は契約婚を真実のものにするために、私をしばらく解放する気はなさそうだ。  私は落ち着かない心を弄ばされているようで胸がいっぱいだったが、侍女たちが「お二人仲がよろしいわっ」と浮き浮きした様子で目配せをし合っているのにも気づいており、仕方ないと王子にうなずいた。 「ええ、是非」
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