心のかせ スティーブン王子Side

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 その時、フランソワーズはまるで僕が彼女の体を愛撫した時のように体を震わせた。全身がわなないたように思った。その衝撃が手から僕に伝わり、僕はフランソワーズの瞳を見つめた。  ――今の反応は何……?あぁ、ダメだってば。彼女を抱いた時のことを思い出してしまう。僕が平常心でいられなくなる。  ――彼女は明らかにあれが初めてだった……。そうか、彼女は僕に触れられたことで、男性に初めてされたことに、いたく動揺したのか……。僕が触れるたびに彼女もあのことを思わず思い出すとか?  ――そうだとすると、なんと純情な……愛らしい心の人なんだろう。  ――フランソワーズはいつも冷静に時に凛々しく、時に潔く、時に勇ましく、聖女の役目を果たして僕を守ってくれていた。その奥にこんな純情で可愛らしい性格が隠れていたなんて……。僕しか知らない彼女の本当の姿……。    グッときてしまった。ハッとしてフランソワーズの顔を見てしまった。彼女はさりげなさを装って微笑んでくれている。  ――でも、僕は分かってしまった。彼女は本当に心底可愛らしい人だ。僕のことを好きではないというのを、なんとかこちらに振り向かせたい。
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