王子の魅力 フランソワーズSide

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 それは豪華な食事をいただいた後のこと。  私はスティーブン王子にニーズベリー宮殿の広大な庭の散策に誘われた。侍女も従者も遠く離れていて、私たちの会話は聞こえないところまで下がらせていた。  昨今の流行を反映して、円錐や球体の模様や幾何学的な形に樹木を刈り込んだトピアリーがあちこちにあった。ニーズベリー宮殿には腕の良い庭師が揃っているようだ。  緑と白に塗られた柵で囲まれた花壇もある。最近の流行りだ。  私はニーズベリー城の庭に足を踏み入れたことが初めてだったので、いろとりどりの薔薇や夏の花々が咲き誇る美しい庭園にうっとりとしていた。 「君のパンなんだけど」  スティーブン王子は私の手を離そうとせず、話し始めた。 「はい。うちにいらした時に残っていた一つを差し上げました。あの時はあんなものしかなくて本当に申し訳ありませんでした」    私は恐縮した。王子の容態に慌てていたので自分や焼いたパンを王子に食べさせた。そんなことをしたなんて、自分でも驚きだ。 「あのパンをまた食べたいと思っているんだ。作ってくれないか」 「本当ですか?」
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