王子の魅力 フランソワーズSide

3/7
前へ
/207ページ
次へ
「あぁ、とても美味しかった。ああいうものは今まで一度も食べたことがなかった」  スティーブン王子が食べたことがないのは材料が理由だろう。庶民は小麦の白パンを食べられないのだから。 「わかりました」 「君には才能があると思う。聖女の才能があるのはもちろんだが、君がずば抜けている才能があるとすれば、それはあのパンである気がする。もう一度確かめたい。人を幸せな心地にする力のあるパンを君は作れそうだから」  私はスティーブン王子の言葉に驚愕して、思わず立ち止まった。私は何もかも、第一聖女であったヴィラに劣っていると思っていた。  ――あのパンが?  ――あのパンが私の才能? 「あともう一つ言いたいのは……すごい才能がなくても、人を幸せにできるということだ。僕が気になっていたことが一つあって、いいかな?」 「はい」 「確かに、聖女としてヴィラは優れている。スキルのレベルは、この時代に生きる者の中でみても、彼女は非常に卓越したスキルを持っている。それは間違いない。でも、君の勇気はヴィラにも決して劣らないものだし、人への推察力はヴィラより鋭いと思う」
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

385人が本棚に入れています
本棚に追加