王子の魅力 フランソワーズSide

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 スティーブン王子は失恋に苦しまれているだけでなく、冷静に周りを客観視していられたようだ。  私は絶句した。  ――王子は私の劣等感に気づいていたの? 「もし、悩んでいたのならば、僕が言うことにも耳を傾けて欲しい。それは気にすることではない。最近ずっと他のことに気を取られて僕自身がもがくような毎日だったから、早くアドバイスできたら良かったのだけれど。今、君にこうして向き合っているから、正直に僕が感じていたことを話すとすれば。君は決してヴィラに対して劣等感を持つ必要はない」  王子の言葉は私の心の核心をついた。  王子はこのもがき苦しんでいる数ヶ月の間に、何を悟ったのだろう。声を殺して嗚咽を漏らさないようにと必死で泣き声を堪えていらした姿を思い出した。あれほど苦しまれている間、私のことに気づいて見てくださっていたのだろうか。  私がスティーブン王子に恋をしたのは、彼の本質的な部分にだ。彼がただただ信じ難いほど美しいだけの王子ではない。
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