王子の魅力 フランソワーズSide

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 目の前に蜂が飛んできて、赤い花に止まった。ハイビスカスだろうか。美しい花で薬草でもある。私がハイビスカスの花をぼんやりと見つめていると、スチーブン王子は私の手をしっかりと握って私の目をのぞき込んだ。 「君のお父様は、法廷弁護士だったね?」  スティーブン王子の次の言葉は、私を真っ青にさせた。父のことは秘密だ。父はとある貴族に罠に嵌められて、弁護士の仕事を最も簡単に失った。私が聖女になる頃には、父は過去の仕事を秘密にして畑を耕し、雨の日になると子供達に文字を教えてひっそりと暮らしていた。    父を嵌めた貴族は今でも巨大な力を持つ一族の人だった。だから、私は父の過去を秘密にしなければならない。 「もしかして……契約婚の妨げになりますか?」  私はスティーブン王子の瞳をじっと見つめた。私たちは既に結婚を発表した後だ。だが、今なら取り消すこともできよう。 「妨げにはならないと思う。そもそも、僕は何があってもこの契約婚を取り消すつもりはない」  私はほっとしている自分に気づいた。私はお慕い申し上げていたスティーブン王子の妻になることを喜んでいるのだろうか。これほど身分不相応の話なのに、もう結婚までしたいと望んでいるということだろうか。
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