なんでも話せる人 フランソワーズSide

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 私の父は鍛冶屋の息子として生まれて、グラマースクールとオックスフォード大学のカレッジで学んで聖職者になった。法律家を聖職者が兼ねるのが当時は当たり前だったからだ。法廷弁護士として父は働いていたが、常時500人の使用人がいると言われれるジットウィンドの家にしきりに呼ばれるようになった頃から、暗雲が立ち込めた。  ジットウィンド枢機卿自身も肉屋の息子だ。王妃の実家が商人であった実例もあるし、最近は貴族ではない家柄の者が法曹界にも多いと聞く。実際に第一聖女ヴィラは公爵令嬢だったが、私は平民出身でありながら第二聖女として陛下に認められた。  ただし、貴族の間ではやっかみがすごいはずだ。 「僕と君はなんでも話せるんだ。これまで、僕と君はいろんな問題について率直に意見を交わしていた。君の家の問題についても、率直に話してくれて構わない。僕はとっくに君の家の事情のことは把握していたわけだし」  私はスティーブン王子に優しくそう告げられて、思わず彼の胸に飛び込みたくなった。必死で自分を抑えた。 「結婚をするにあたり、君を丸ごと受け入れる覚悟があるから」  私は泣きたくなった。嬉しくて。
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