なんでも話せる人 フランソワーズSide

4/5
前へ
/207ページ
次へ
 私が話さなくても、王子が既に知っていて、ずっと受け入れてくれていたことに驚いたが、心のどこかでスッと楽になる部分があった。 「君のお父様が失職した悔しさだけれど……」  スティーブン王子の胸はとても広く、褐色の髪が風に揺れていて、私を見つめる眼差しはどこまでも優しく、不思議な形に刈り込まれた樹木のそばで佇む様子は、上品でありながら理知的で包容力に溢れていた。  ――王子を抱きしめてしまいたいわ……。  父の悔しさは私も少しは知っている。ずっと何があったのか知りたいと思っていた。だが、触れてはならない巨大な力があるということも知っていた。 「よければ、僕は調べてみようと思う。お父様の無念を晴らしてあげたいからね」  私は信じられない言葉を王子の口から聞いて、涙が溢れるのを抑えきれなかった。 「よしよし。大丈夫だから」  スティーブン王子は私をそっと抱きしめてくれた。大丈夫、大丈夫と私の背中を優しく撫でてくれて、私は広くて温かい胸の中で涙が溢れるままに抱きしめられていた。  これ以上優しい言葉をかけられたら、私はこの恋心を隠していられるか自信がない。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

388人が本棚に入れています
本棚に追加