雨上がりの時だけ、あなたに会える

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空に好きだよと伝えたあの日以降、空はあの場所に現れなくなった。 寂しい。 空に抱きしめられたことも、 空が言ってくれた言葉も覚えているのに。 生きたい、と言ってくれた。 生きていてほしかった。 今でも偶に思い出して泣いてしまうけれど、 やっと少し笑えるようになってきた。 空のいない世界で、生きている。 あの日から半年ほど経ってしまったけれど、 まだあの場所に足を向けてしまう。 雨上がり、いつもの癖であの場所に行くと今日は先客がいた。 珍しい、滅多に人なんて来ないのに。 少し空に後ろ姿が似ている気がする。 いや、空のほうが低いか。 それにその人は、すごい痩せている。 だから空じゃない。 だめだ、この場所だと、どこまででも空の影を追いかけてしまう。 一人の時はそれでもいいけど、今日は人いるし、 帰ろう。 もう少しでクリスマスだなとか 毎年やるクリスマスパーティーに空もいたら楽しかったのになとか考えながらその場所に背を向ける。 あの後ろ姿が空だったらいいのに、なんて。 「美夜」 え、幻聴? 懐かしい声が聞こえた気がして、振り返る。 嘘だ。そんな事ある? さっき後ろ姿だけだったその人がこちらを向いていた。 少し背が高くなっているし、明らかに痩せていて少し年をとっているけど、あの時と同じ顔で微笑んで両腕を広げている。 空だ。 え、なんで、と頭が動くよりも先に体が動く。 いつかのあのときのように走って、空に抱きついた。 「空、空だ。」 もう離さないというように、きつく抱きしめる。 空も抱きしめ返してくれた。 温かい。 最近我慢できてたのに空のせいでまた涙腺が決壊した。 泣いてばかりだな、ほんとにもう 「美夜、聞いて、俺生きてる」 その言葉に、もうこれ以上流れないと思っていた涙がその倍流れてくる。 生きてる…? 空が生きてる。 涙が止まらない。 いつも二人で話したベンチに座ってぽつぽつと空が話し始める。 生きたい、と言ったあと目が覚めたら病院にいた事。 植物状態のまま、5年眠っていたこと。 生き霊だったってこと?って聞いたらそうみたいって、空のバカ。 でも、そんな会話ができることが嬉しくて、また泣いてしまう。 「美夜、俺生きてる。 美夜の気持ちが半年前から変わってなかったら」 空の手が私の頬に触れる。 「俺と生きて」 どんだけ空に泣かされればいいんだ。 涙が次から次に流れて絶対不細工だ。 こんな顔で、返事をするなんてムカつくけど それ以上に嬉しさが勝って、何度も頷いた。、 「空、一緒に生きて、大好き」 「俺も大好きだよ、美夜」
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