雨上がりの時だけ、あなたに会える

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さっき雨が上がった。 高校が終わるまで降ってくれれば良かったのに。 そう一人愚痴りながら美夜はいつもの場所へ走っていた。 最近はどんどん暑くなってきた。 もうすぐ夏が来る。 この雨が降る季節が小さい頃は大嫌いだったのにいつからか好きになっていた。 きっと彼に出会ったからだ。 視えた。 私が走ってくるのに気づいたのか彼は笑って腕を広げる。 「空!」 そう言いながら彼に勢いのまま抱きつくと、彼は私を抱きとめながらも小さく笑った。 「美夜、走ってきたの?」 「だって、雨が早く止むから」 すねたように言うと、それにも空は小さく笑って私の頭を撫でる。 いつまで経っても、子供扱いだ。 確かに出会った時は彼より、5歳くらい下だったけれど、今はもう同い年になったと話していたのに。 彼はあれから年をとってない。 空は幽霊だ。 高校1年生の姿のまま、5年前も今も私の前にいる。 雨上がりにだけ、幽霊が視えるようになる私の特殊体質のおかげで空と出会えた。 またちょっと薄くなったな。 空の体をみる。 雨が降らないうちにまた薄くなった。 薄くなった幽霊がどうなるかは私が一番知っている。 薄くなって薄くなって、最後には消えてしまうのだ。 「美夜、高校はどうだった?」 私の顔がちょっと暗くなってしまったのを感じ取ってか、空が話しかけてくる。 「楽しかった!」 ダメだ、せっかく会えたのに暗い気持ちになっていたら、時間がもったいない。 空が好きだ。 幽霊なのに。 もう死んでいるのに。 どうしようもなく、好きなんだ。
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