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確かに、マーズオマールは非常に美味だ。体長25cmほどの体の中に、ぷりっぷりの身がしっかり詰まっている。
二酸化炭素がまったくない環境下では生息できないが、地球は二酸化炭素も大気中に含まれていたはずだし、新鮮な状態で届けることもできるだろう。箱を振ると、がさがさと小さく音がする。冷凍された状態でもまだ生きている証だ。すぐに届ければ、新鮮な状態で配達することができるだろう。
「わかりました!この僕が、責任をもって美味しいエビをご友人の元へ運ばせていただきます!」
僕はばばん!と大きな胸を叩いて言った。
「あ、書類だけお願いしますね。こことここと、あとここにハンコ……あと料金がこの重さだとこれくらいで……」
「わかりましたわ」
その時、僕はうっかりしていた。
確かに会社は人手不足で、その日も多くの社員たちが出払っていたのは事実。しかしいくら急ぎの荷物でも、二人以上の社員でダブルチェックを行ってから配達するのが規則となっていたはずなのに。
僕は思わぬ美人との遭遇にすっかり浮かれていたし、大切なことを忘れていたのだった。
つまり、場所によっては――絶対に運んではいけない荷物がある、ということを。
「おま、おま……ばっきゃろおおお!どうすんだこれ!?大損失だぞ!?」
「あわわわ……」
その日。
僕は夜、ニュースを聞いてひっくり返ったのだった。
地球はたった数時間で、壊滅状態となっていた。巨大なエビが暴れまわって、地球の大陸のほとんどを海に沈めてしまったからである。
マーズオマールは、二酸化炭素がゼロだと生きられない。
ただし一定以上酸素がある環境下だと、全長200万kmまで巨大化してしまうのだ。僕もあの女性も、生物学の知識がまったくなかったのである。
「ああああ、ごめんなさい、社長ー!」
僕は、思いっきり叱られてしまった。きっとあのロゼという女性もしょんぼりしてることだろう。
せっかく、地球には面白いもの、美味しいものがたくさんあったのに台無しにしてしまった。本当にうっかりである。
次からはこのようなことがないよう、気を付けようと思う。
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