3人が本棚に入れています
本棚に追加
滅亡の理由
西暦2XXX年。
僕達僕達“株式会社・宇宙宅配便”が生まれてから、百年くらいが経過しようとしていた。
最初は太陽系のごく一部の星だけで行われていた、異なる星の間での宅配サービス。今では太陽から冥王星に至るまでの、広い範囲で展開されるようになっている。特に、太陽と冥王星が追加されたのはつい先日のこと。最初はお手紙のやり取りだけだったのが、どんどん重たい荷物もお届けできるようになり、会社は人手不足でてんてこまいとなっているのだった。
「ドム!休んでる暇ねえぞ、急ぎの荷物だ、行ってくれ!」
「ええええええ……」
金星の酸性雨をかいくぐり、どうにか大きな荷物を届けてきたばかりの配達員の僕。会社がある火星に戻ってきて早々上司に言われてげんなりしてしまった。
倉庫に山積みになっているのは、大小様々のダンボールの山だ。どうやら、地球に観光に行っていた木星人が、ご近所にお土産を配ろうと大量発注したらしい。
確かに、地球には他の惑星にはない美味しいものがたくさんある。異星人たちの間でも人気の観光スポットであるのは間違いない。が、さすがにこの量は異常ではないか。
「アマルテアのお宅に三個、エララに一個、ガニメデに十個、イオに八個、メガクリテに二個、ハルパリケに一個でバレトゥードーに二個、アオエデに五個でエウロパに二十五個で……ああああああああああもう!」
木星には、旧ホラクラム星人が大量移住した影響になり、ここ百年ほどで爆発的に人口が増えたのだった。ガス惑星なので生命体が住むのに適さない、なんて言われていたのは遠い昔のこと。ホラクラム星人のような、有毒物質に強い“浮遊生命体”には、地面のあるなしなんて関係ないのだ。
彼等は木星のガスの中を、ふよふよと漂いながら生活している。自分達の会社にとっても、木星のお客さんは多く、得意先と言っても過言ではないのだった。
また木星と言う星は、衛星が非常に多い事でも有名である。木星に本拠地を置いて、周囲の衛星に別荘を持つ金持ちも少なくない。今回のホラクラム星の公爵夫人も、各衛星に住んでいる親戚にお土産を配りたくて仕方なかったのだろう。――自分達からすれば、仕事量爆増でかなり頭が痛い事態であたのだが。しかも。
「急げよ。全部クール便だ」
「まじで?」
「地球の魚は美味いからな。鮮度が大事だ。最速ワープ使って大急ぎで運ぶこったな」
「……まじで?」
何故だ。何故親戚周りに大量に配るお土産を、急いで届けなければいけない冷凍モノにしてくれたのか!
僕はがっくりと肩を落とした。
――……今日、僕家に帰れるかなあ。確実にてっぺん超えるじゃん。
この仕事をするため、火星の賃貸アパートに住み始めて五十二年。もっと効率よく仕事をこなさなければいけないなあと常々思う。
僕達オコロ星人からすれば、八十五歳の僕なんてまだまだ若造以外の何者でもないのだから。
最初のコメントを投稿しよう!