僕の修行

1/1
前へ
/1ページ
次へ
「それでは皆さんに、僕がどんな修行を一年間していたのか説明しましょう」 と僕は切り出した。皆は、ベンチに腰掛けて傾聴注目している。僕の修行は、ふとしたことがきっかけであった。  ある日、郵便ポストの中に「恐山ホテル 無料招待券」が入っていたのだ。普通の人なら訝しむであろうが、僕はピンときた。神様が僕に修行の機会を与えてくださったに違いあるまい。と。  そういうわけで招待日時に合わせて僕は新幹線に乗ったのだった。そして、恐山ホテルに辿り着いたのだった。それは、最近作られた立派なホテルだった。 「よくぞいらっしゃいました」  と背の曲がった男が現れて、不吉な笑いを浮かべるのであった。僕は少し気味が悪かったが、神様の手前、帰るわけにはいかなかった。  そのホテルの部屋は、眺めの良い角部屋の和室であった。空は、今にも雨が降り出しそうな重苦しい感じであったが、川のせせらぎが僕の気持ちを明るくさせたのであった。他にも野鳥の鳴き声や、虫の声、そして、美味しい空気が、僕の心を落ち着かせてくれたのである。  言い換えるなら、普段の僕の生活が、どれほど窮屈だったのか、ということであるが、そのことについて云々するのはやめておこう。僕は、私小説的な生活の詮議について、細かく描写するのは好きではないのだ。何よりも思い浮かべている僕のテンションが下がってしまうではないか。  温泉に入って、浴衣を着て部屋に戻ると、海鮮料理が並んでいた。その中でも、何故かそこに並んでいたローストチキンを頬張る。刺身も良いが、やはりチキンだ。  そんなことを思いながら、次々とテーブルの上のものを平らげていると、目の前に白いモヤのようなものが出てきて、人形のようになる。これはもしや、神様が現れたのか、あるいは悪魔が現れたのか、固唾を飲んで僕は見守った。 「怖気づかずによくここまでやってきたな」  控え室のドアが開いて巨軀の坊主頭の虚天入道とその仲間たちがやってきた。入道は、理性的で一見優しそうな目をしているが、口元に下卑た感じがあった。肌は何故かとても黒い。その後ろに二人の男、二人の女がついている。 「ふっ。お前を生贄にすることにより、私の日本沈没計画は完成するのだ。多くの人々が2025年7月がヤバいと予言している。それは、何故か。集団無意識が危機を訴えているからなんだよ。そして、その予感は当たるんだ」 「うるせえ。タコ入道」 というと、激怒した僕は乗り出した。 「さっきから、黙っていれば、好き勝手喋りまくりやがって。日本が沈没してたまるもんか」 僕が襲いかかると、入道は、サッとかわして足を出してよろめかせる。そこに、敵のメンバーの一人である女性の強烈な蹴りを受け、股間を押さえたところを、もう一人の男のメンバーのドロップキックで吹っ飛ばされた。 「あぐわー。奴ら……ほ、本当に日本を沈没させるかも知れねえな」 と呟いて僕は気絶した。 「安心しろ。命に別状はない。だが、圧倒的な力の差が、俺たちとお前たちにはあるということを覚えておいてもらおう」 5人は、呵呵大笑して去ってゆくのであった。  僕は白目を剥いている。旅館の女将は、手を空下に翳して、 「シャランラ!」 というと、僕の周りにピンク色の雲のようなものが現れて、ゆっくりと目を開ける。 「ど、どうしたんたんだ。激痛で気が遠くなりそうな股間が、何ともないぞ。身体が元に戻っているっ」  僕がジャンプして喜んでいると、女将は弱った顔をして言う。 「これ、結構、魔法パワー使うんだから、気をつけてね」 すると、僕は舌を出す。 「ごめん。ついつい、ケンカっ早くて」 それから、僕は恐山で修行をした。たまに、五人の悪い奴らに阻まれることはあったが、それでも、修行の手は緩めなかった。ある日、警察がやってくる。 「宿代がないのに住み着いているのはあなたか」 僕はスッキリした顔で答える。 「はい」  すると、警察は僕を逮捕した。今では、牢獄の中で修行をしているが、たまに、あの五人の奴らが邪魔をしてくる。  今日の昼、食堂にゆくと、やたらに食事が豪華だった。その中でも、何故かそこに並んでいたローストチキンを頬張る。刺身も良いが、やはりチキンだ。  そんなことを思いながら、次々とテーブルの上のものを平らげていると、目の前に白いモヤのようなものが出てきて、人形のようになる。これはもしや、神様が現れたのか、あるいは悪魔が現れたのか、固唾を飲んで僕は見守った。 「怖気づかずによくここまでやってきたな」  食堂ののドアが開いて巨軀の坊主頭の虚天入道とその仲間たちがやってきた。入道は、理性的で一見優しそうな目をしているが、口元に下卑た感じがあった。肌は何故かとても黒い。その後ろに二人の男、二人の女がついている。 「ふっ。お前を生贄にすることにより、私の日本沈没計画は完成するのだ。多くの人々が2025年7月がヤバいと予言している。それは、何故か。集団無意識が危機を訴えているからなんだよ。そして、その予感は当たるんだ」 「うるせえ。タコ入道」 というと、激怒した僕は乗り出そうとしたが、看守の目が光っているので、やめておいた。僕は無視してローストビーフを食べ続けている。  というわけで、僕の修行は失敗しました。2025年に7月ごろには日本は滅んでいるでしょう。それもこれも、この五人の人たちのせいです。この五人は、僕の脳内に電波を送って確実に操っています。僕は、僕は、やめてくれ。助けてくれ!!!奴らに、奴らに殺されるっ!  何、他人事みたいな顔をして読んでんだ、コラ!!!もし、僕がやられたら、困るのはあんたらだぞ。プンプン!
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加