とんぼ商店

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とんぼ商店

 それから、三人はとんぼ商店にゆく。とんぼ商店は、下宿から、城山公園の辺りを歩いて、コンビニがあるのだがその裏にコインシャワーがあって、その近くであった。  コインシャワーは、十分間で百円と、とても安かった。六十歳くらいの、刈り上げている女性が、オーナーで、とってもワイルドな女性だった。  ちなみに、それから、数ヶ月後、お金の尽きた正夫は、そこのコンビニで働くことになるのであるが、そこの女店長が爆乳で、AV女優の紫彩乃に似ていた。あの爆乳を揉めたらと考えることは、何回かあった。ある日、何故かチャイナドレスを着ていた時があって、その日の夜は悶々とした記憶がある。あれは、誘っていたのか。誘っていないのか。だが、それは、また別の話なので、別のところでしよう。  とんぼ商店の店長は、坊主頭で、彼はいつも反戦を訴えていた。確か、安部首相についても、戦争の匂いがすると、そんなに好きでなかったはずだと思う。そんなことは、正夫には関係なかったが、正夫はどっちかというと、この当時、左っぽかったが、歳をとるごとに右になって行って、今はバリバリの右だった。 「おう。お兄ちゃん、お久しぶり」 「あっ、どうもです」 「おう。渡部の兄ちゃん、ここんところ見なかったねえ」 「実家で就職しましてね。今日、帰ってきたんです。今ホテルに泊まってますよ」 「そうなんだ。狭山君が会いたがっていたぞ」 「あー。そうですね。会いたいですね」 狭山君とは、早稲田大学の面長な顔つきの男だった。小説を書いていて正夫にも見せてくれたが、面白かった。「俺と彼女とディカプリオ」という、ディカプリオという名前の猫と男女の同棲の話だったと記憶している。正夫も小説を色々書いていたが、現在あまり記憶はない。  そこで、高田はカツ丼、渡部はのり弁、正夫は茄子マヨネーズとご飯を買ってから、お茶を買って、下宿部屋に戻ってくるのであった。 「ところで、正夫さんは小説を書いとるんですか」 と渡部が聞いてきた。 「まあ、ぼちぼちやっているよ」 「そうですか」 「でも、その小説が売れるということは、ないだろうなあ。何だか、自分でわかってきたよ」 「へえ」 「何か、グダグダするために、その理由をつけるために小説を書こうと、周りに言っている気はするね」 「それじゃ、ダメじゃないですか」 「ああ、ダメだよ」 というと、正夫は、茄子マヨネーズを食べる。これが、とんでもなく美味しかった。マヨネーズの濃厚さが絶妙なのだ。 「まあ、お金がなくなったらコンビニで夜勤でもするから安心してくれ」 と呟く。  現実、その通りになった。この執筆をしているのは、もはや、二十年後であるが、ガードマンをやっていた方が楽だったのになあとつくづく思う。この当時のコンビニはゆるゆるなので、こっちも楽なのであったが、ガードマンの方がもっと楽だった。 「ところで、ワベさん、じゃなくて、渡部さんは何しているのですか」 そこで、渡部の説明が始まるのであるが、それは何か怪しい会社だった。有機栽培の野菜を売るところらしくて、マルチ商法みたいなことを言い出していたのである。後に、転職していることから、やはり怪しかったのであろう。ニンジンとかいう社名だった。  それやこれやで、三人は、ご飯を食べ終える。とんぼ商店のご飯はとても美味しいが、高田はそうは思っていなかったみたいであった。これも、東京人のせいか。  正夫は千葉出身千葉育ちなので、少し僻みっぽくなっているところもあった。ちなみに、渡部は、名古屋出身であった。彼のイントネーションも、かなり、名古屋弁っぽくなっている。が、河村市長ほどではない。一説によると、あんな名古屋弁のきつい人は、名古屋にさえ、そんなにいないのらしい。
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