⭐︎序章⭐︎ 小説 中野はもう始まっている

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⭐︎序章⭐︎ 小説 中野はもう始まっている

 小説中野はもう始まっている。正夫は、ふとそんなことを心の中でつぶやいた。かなり前に、ある時期の中野での生活を描いた小説であったが、もう今はなくなっている。  どうしてかというと、理由は忘れたが、正夫には作品を削除する癖があった。世間一般には、セキュリティ対策と言っているが、これまで描いたものをほとんど削除している。  どうしてそういうことをするのかは、確たる理由はわからない。これもそうなるのかもしれないので、読者の皆様方におかれては、すぐに読んでしまうことをお勧めしたい。  いっそ、読まないことをお勧めしたいくらいであるが、それはそうとして、正夫は、後輩の高田伸二が来るのをボロアパートの二階の部屋で待っていた。  最近、分かったことであるが、高田伸二とは趣味は合いそうで、全然、合わない。彼がお勧めした、鋼の錬金術師というアニメを見たことがない。いや、ちらっと見かけたことはあるが、それでは視聴のうちには入らないだろう。  そんなようなことばかりで、正夫がスーパーロボット大戦のことを話そうとすると、 「友人がうんざりするほどその話をしてくるので、スパロボの話はいいです」 と断ってきた。  その当時、なんなら正夫の頭の中には、第四次スーパーロボット大戦のことしかなかったから、彼の世界観は、いや、宇宙観は、スーパーロボット大戦一色であったから、それを禁じられるのはとてもしんどい縛りプレイであった。  しかも、他の友人たちはスーパーロボット大戦のことにまるで興味がなかった。千葉のオタク友達のことが懐かしく感じられた。とはいえ、もう、中野に住んでいるのだから、なかなか会えなくなっていた。 「あっ、どうも、さとさん」 正夫の名前は、里中正夫だったので、さとさんと呼ばれていた。当の高田伸二が玄関までやってきたのだ。
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