4人が本棚に入れています
本棚に追加
目を擦って、「なんだ。たかだか、これは夢じゃないか。もう寝ないとな」と自分を叱咤した。
けど、布団に籠って目をつぶっても、一向に眠れない。
それどころか、祭囃子がより一層大きくなってきた。
祭りが、こっちへと近づいているんだ……。
試しに左頬を抓ってみた。
目が覚めない。
試しに右頬を引っ叩いてみた。
痛い……。
「おい! 鯛! 起きるぞ! 逃げよう!」
布団から飛び出て、鯛を叩き起こした。
布団に潜っていた鯛の奴は、ガタガタに震えやがっている。
「お、おう!」
「まずは、旅館から出ようぜ!」
「お、ああ。大地は踊らないのか?」
「はあ、お前寝ボケてんだろ!!」
鯛の奴を連れて、この部屋のドアを開ける。
廊下はとても暗くて静かだった。
祭囃子は、階下から聞こえる。
廊下を二、三歩歩いて、気が付いた。
階下からでないと、出入り口がないんだっけ。
「とりあえずは……うーん……祭り見てみようか?」
「お、おう」
俺は鯛を連れて、階下へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!