はじまり

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 目を擦って、「なんだ。たかだか、これは夢じゃないか。もう寝ないとな」と自分を叱咤した。  けど、布団に籠って目をつぶっても、一向に眠れない。  それどころか、祭囃子がより一層大きくなってきた。  祭りが、こっちへと近づいているんだ……。  試しに左頬を抓ってみた。  目が覚めない。  試しに右頬を引っ叩いてみた。  痛い……。 「おい! 鯛! 起きるぞ! 逃げよう!」  布団から飛び出て、鯛を叩き起こした。  布団に潜っていた鯛の奴は、ガタガタに震えやがっている。 「お、おう!」 「まずは、旅館から出ようぜ!」 「お、ああ。大地は踊らないのか?」 「はあ、お前寝ボケてんだろ!!」  鯛の奴を連れて、この部屋のドアを開ける。  廊下はとても暗くて静かだった。  祭囃子は、階下から聞こえる。  廊下を二、三歩歩いて、気が付いた。  階下からでないと、出入り口がないんだっけ。 「とりあえずは……うーん……祭り見てみようか?」 「お、おう」  俺は鯛を連れて、階下へと向かった。 
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