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「この祭りには、どうして来たの?」
「……へ?」
「お、おう。起きたら、花火が鳴って、そして、外を見たら……」
「鯛! 黙って、黙って」
「お、おう」
俺は少し考えてから、こう言った。
「お姉さんの方は、どうやってこの祭りに来たの?」
「え? そりゃ、家の近くだから……」
「……へ?」
かき氷がカラになる頃には、竹のベンチを照らす日差しの中に、風鈴の音がどこかから、鳴ってきた。
「私、帰るね……」
「……」
「お、おう」
浴衣姿の綺麗なお姉さんは、この海からは遠い岩場の方へと歩いていった。
辺りを踊る人たちの朧気の姿が、いつの間にか、どこかへと消えていた。神輿を担ぐ人たちも、祭囃子もなくなっている。
海の上の波も穏やかになって、なんだか、後の祭りのようだ。
「……鯛。俺たちも帰るぞ」
「……そうだよなあ」
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