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恋の始まり
三浦君で上手くいかなかった私の恋がどこかで実を結ぶなんて考えられなかった。でも、三浦君と私が並んでいる絵を想像出来たかと言われると分からないのだ。
私の未来は何処までもぼんやりしていた。
三浦君で駄目だったら、男関係で悩むのはしばらくやめようと思っていた。が、頑張ったのかと言われると自信はない……。私らしい逃げ方でもあった。今後は見合いも断って、仕事に注力して一人で生きていけるように頑張ろう……。今は総合職になって、給料も上がった事だしね……。
それで金曜の朝。
「やぁ、どうも。田中さん」
この人の礼儀のなってない挨拶は相変わらず。私が中途だからって舐めてんのか。仕事上は頼りにならないかも知れないが、年功序列なら二つも年上だぞ? なんて、思っているとふわっと抱え込まれて、また人気のない給湯室に引き摺り込まれ、壁ドンをされる。これはもう四度目。
だから、駄目なんだって、これ。
「そろそろ落ちる頃かなあと思ってるんだよね」
壁ドンしたまま、その癖っ毛を掻き上げながら、眼鏡をずらしてその碧みがかった裸眼で私を見つめ、北川さんが言う……。
「まあ時間は幾らでもあるから、気長にいこうか。ね、田中さん?」
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