彼女

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彼女

 再三言うが、三浦君に彼女がいても関係ない。総務の彼女は定時帰りの堅物女。色気も愛想も皆無だ。負ける気はしない。  だが、当の三浦君は恥ずかしげもなく関係を公言している。特に飲み会では格好のネタにされている。 「おまえ、総務の鉄の女と付き合ってるって本当か?」  部長の木村さんが信じられないと言った顔で三浦君をまじまじと見ている。当たり前だ。あんな見た目からして面白味の無い女。三浦君の趣味を疑われてしまう! 「はい」  三浦君はニッコリと応える。どうしてそんなに幸せそうなの!? 何なの? 脅されてる…? 「槇さんて三十過ぎてる?」 「今年二十九ですよ。一つ上です」 「結婚するのか」 「はい。でも、ここだけの話にしてくれませんか」  小声だって聞こえてます。私の飲み会の位置取りはいつだって完璧なのだ。私は木村さんの前に座っている。三浦君の横や前に座ると逆に話が盛り上がらないという事が分かっているので。 「そうか、そうか! いいよな、あの子。仕事早いし真面目だし、おまえに合ってるよ。歳食ってから分かる良さだよな!」  木村さんは三浦君の肩を叩いて上機嫌だ。  木村さん、まさかのそっち!?  信じられない。槇さんは制服の上に夏でも黒いカーディガンを着て、私服も真っ黒くていつも鴉みたい。  私の方が三浦君の事を好きなのに。  何で奪られた?    
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