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雨の音を聞きながら僕は学校の昇降口で空を見ていた。
「やまない」
予報外れの雨を恨めしそうに眺めて、他の生徒たちを見送っている。冬に近いこの雨はとても寒そうだ。
時には傘もなく走る人や、合羽を持たないで自転車を走らせている人もいるけど、その仲間にはなり切れない。
別に雨に当たって風邪をひくのを恐れているわけではない。そのくらいで済めばよい。彼らより僕の下校の道のりは長いから最悪な事態となる。
遠く山間に住んでいる僕は普通ならバス通学になるところを自転車で通っている。そして天気予報を信じた今日は合羽の用意なんてない。そうなると晴れるのを待つしかないのかと思っていた。
「そんなところで落ちこんでんなよ」
ニコリと笑う女の子がこちらを向いていて話しかけている。
「帰れないんだからしょうがないだろ!」
僕はそんな人と親しげに話す。だって相手はずっと昔から知っている人だから。
「姉ちゃんと違って自転車なんだから、これで帰ったら危ないよ」
昔からの言い方で「姉ちゃん」と呼ぶけど彼女とは単純に家が近いだけの他人。だけど、限界集落とも言える山の中に住んでる歳が二つだけ違う僕たちは姉弟のように育っていた。
「だから、チビスケもバスで通ったら良いのに」
この学校は小中共用で僕もこの春、中学に上がるまではバスで通学していた。だけど、とある理由で自転車で通うようにしていたんだ。
「職員室でごみ袋でも貰って、それを着て帰るよ」
姉ちゃんから僕は視線は外して離れようとしたら「ちょっと待ちなさいよ」と僕の肩を姉ちゃんが掴んでいた。
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