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目が覚めた。若い看護師の女性を視界に捉えた。
天使かしらと思った。念願叶って漸く天に召されたかと感慨深く思った。
縁無しメガネを掛けた医者がやって来た。興奮して訳の分からないことを捲し立てられたけれども、答えるのが面倒くさくて気を失ったふりをした。
これが現実だ。
生きてた。
これでまた起き上がったら、あのアホみたいな忙しい毎日が待っていると思うと気が重い。生きている以上、納期調整し続けなくちゃいけないんだろ。ここは地獄か。
ああ、もう手なんか透けてない。足もある。
なんて迷惑なんだ。
全部終わらせたはずなのに。
恥晒しが……。
「奇跡じゃないですか?」
病室でリンゴの皮剥きをリアルにする人間を初めて見た。ナイフなど持ってたら、あの怖い天使にドヤされるぞと思ったのだけれど、彼が笑っていたから、まあもう何でもいいやとなった。
また抱きたいと思って戻ってきたってことは彼にはお見通しなんだよ。
早く退院したい。
彼に渡された皿の上のリンゴを摘んで食べた。
蜜があってとても甘かった。
窓の外はとてもいい天気だった。
了
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