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「透け……? いやまさか。だって何で言葉が聞こえて通じてるの」
「知りませんよ、そんなこと。何で俺に聞くんですか。頭の中にあなたの声が入ってくるんです、響くみたいに。怖過ぎる。足元見えてないし。どういうこと……?」
「あ、本当だ。手が透けてる」
「本当だ、じゃないですよ!」
夜の窓ガラスには彼しか映っていない。
「凄いな」
「感心してる場合ですか」
「いやぁ……」
「どうしてここにいるんですか」
「どうして? さあ?」
惚けてみせた。だって、本当に分からないんだよ。
彼が手に持っていたビニール袋をテーブルに置いた。袋の中で、ガチャっと音がした。何が入っているのだろう。
彼の動作が何でも気になる。
彼はジャケットを脱いで椅子の背もたれに掛けた。今日の雨は強かった。だからそのジャケットは水を弾いていた。
彼がこちらを上目遣いで見てくる。
その顔は最早、懐かしい。
「忘れ物ですか?」
さすがは出来る後輩。要求分析はいつも完璧なんだ。順応性も早い。
でもさ。
「いや、全然分かんない」
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