表の顔と、裏の顔

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「あっ、つむぎー!待ってたよ」 「あかね!ごめん。撮影始まっちゃって  た?」 「ううん。あと10分あるから大丈夫だ  よぉ」 この私の目の前にいるめちゃくちゃ可愛い女の子は、女優&アイドルの磨樋茜。 私の女優の1つ先輩であり、大切な親友なんだ。 「磨樋」って珍しい苗字だよね。 私も初めて苗字を聞いたときびっくりしたもん。 『どうやって書くの?』って聞いちゃった。「そういえば、つむぎは今日入学式だったよ  ね。どうだった?」 と神妙な顔で尋ねてきた。 私はあっけらかんな態度で 「特に何もなかったかな。バレなかったし」 と言った。 あかねは心底驚いたようで、 「ええっ!いいなぁ。私は追いかけまわされ  たの!」 って必死に伝えてきた。 頭にハテナマークとひよこがピヨピヨ飛んでいると、最終結論が出た。 「そっか。あかねは本名と芸名が同じだし、  変装とか何もせずに行ったんだもんね」 あかねは頬をぷくーっと膨らませながら言った。 「そうなんだよ。なんかジロジロ見られる  し、男子に攫われそうになったし……私も  変装すればよかったぁ」 「そうなんだ。よしよし。大変だったね」 「ぐすっ、うん」 「2人とも、話してるところ悪いけどそろそ  ろ撮影始めるよ」 『はーい』 あかねは背筋をずっと伸ばして、さっき話していた人とは思えないようなしっかりした歩幅で歩き出した。 私は、その背中を見て呼び止めた。 「あかね」 くるっと振り返って首をこてんと傾げて「ん?どうしたの?」 と言った。私は自分ができる1番明るい笑顔で 「ありがとう」 と言った。 その言葉を聞いて、あかねは不思議そうな顔をしたあと、コスモスが咲いたかのように笑った。 でた、キラキラで完璧で弾けるような笑顔。さすが本業がアイドルだね。 「なに言ってるの。私も助かってるよ、つむ  ぎに」 そんなかわいい顔で言われたら、恥ずかしくなっちゃうよ。 そう思った矢先に顔が熱くなった。 それを見て、 「ふふっ」 とイタズラが成功した子供のような顔で言った。 もう。 そんな顔で言われたら言い返せないじゃん。少し頬を膨らませて怒りながら、現場へ向かった。 そして私はニヤッと少し悪い笑顔を作って「さぁ、演じましょうか」 と誰にも聞こえないような小さな声で言った。 そして演じる人をイメージして、頭にデコピンをした。 そして、私は完全に演じる人に乗り移る。 ここからは私の独壇場(エリア)。 誰も近づけさせないし、誰も中に入れるつもりはない。 そう思いながら、私は現場に向かった。 そのあと私[紬]はドラマで演じる人を完全に演じ切り、ぶっちぎりで監督に褒められた。
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