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大迷惑
入学式の次の日、私はやや震えながら校門をくぐった。
だってさ、なぜか近くにいる人たちがジロジロ見てくるんだよ!
なぜか!
もしかして、カツラがズレてるとか?
私の地毛は水色なんだけど、印象的すぎて目立っちゃうの。
だから黒色のカツラに赤色のカラコンをつけている。
そう思ってごく自然な動作で頭に手をやるけど、特に異常はない。
昨日なにかおかしなことをやらかしたっけ?うーん、何も思い当たることはないな。「ん?」
やっと気づいた。
視線には敏感になってるはずなのにな。
私の後ろに女子からの熱い視線が注がれている。
視線を送っている女子の目はハートになっている。
私が1人で納得していると、後ろにいた女子が話している内容が耳に入ってきた。
「見て♡昴様よ!今日もお美しい♡」
「あのご尊顔を見ているだけで心が洗われる
というか、元気が出るというか♡」
「付き合っている人がいないんでしょう?」「そうそう。昴様の横で歩ける方なんてこの
学校にはいないわね」
「そうね。私は恐れ多くて歩けないわ♡私は
昴様に独占されたいけど……ムリよね」あーなるほど。
私の後ろにそのスバルサマがいるんだね。
スバルサマって、昨日の映画部部長だよね。確かに昨日顔を見たとき、というか入学式の映画部の紹介のとき、そこだけ女子の黄色い歓声が桁違いだったもんね……。
マネージャーさんとか監督さんが見たら絶対スカウトするな。
うん。絶対ね。
ん?待てよ。
今って考えなかった?
いやいやいや。
聞き間違いだよ、聞き間違い。
でもなんか嫌な予感がする。
そんなこんなで頭の中がぐるぐるしている時に、後ろから
「おはよ」
と言う声が聞こえた。
まさか…
嫌々振り返ると、そこには杉高先輩が。
案の定予感が的中。話しかけてきた。
「お、おはようございます」
なるべく小さな声で答えた。
陰キャの私が陽キャの先輩と話している=女子からの視線がっ。
鋭いよっ。
私の後ろにいた人の話し声が、熱いものから氷点下くらい冷たいものに変わった。
「何あの子」
「なんで昴様に話しかけられてんのよ」
「隠キャなのに」
「ブスは引っ込んでろ」
ううっ。思わず狼狽えるほどの悪口が…。「ん?どうかした?」
そんなことを思っているとはつゆ知らず、先輩は話しかけてくる。
「い、いえなにも…。私は早急に終わらせな
ければいけない用事があるので失礼しま
すっ」
「えっ。ちょっと待ってよ。ねぇ」
と杉高先輩が私を引き止める声がする。
なんで?なんで話しかけるのよ!
走り始めた私を見て、他の人は
「なんで昴様の話を無視するの?」
「近づくなよ、ブス」
と話しているのが聞こえた。
話し続けても逃げても同じじゃん!
私の地味で平穏な学校生活が遠くなった気がする。
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