謎の手紙と彼女

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謎の手紙と彼女

俺が星宮の不思議な光景を見た、次の日。 今日の天気はあいにくの雨。 本降りではなく、しとしとと降っている。 俺は傘をさし、水たまりを避けながら学校には向かった。 「おはよ、拓海」 いつも通りの、陽奈の挨拶。 元気な明るい挨拶のはずなのに、俺は色がないように見えた。 「どうしたの?元気ない?」 「まぁ、大丈夫」 コイツ、俺に昨日行かせたことを本気で忘れているらしい。 そして、俺の心配までしてくる。 なんかムカつく…。 「ほんと?無理しないでね。体調悪かったら保健室行くんだよ」 子供じゃねーし。 「あぁ」 陽奈はそれだけ言うと、どこかへ姿を消した。 はぁ、どうしよう。 悩みのせいなのか天気のせいなのか、頭が痛い。 俺は憂鬱な気持ちのままうつむいた。 机の上に視線を走らせると、ペンケースの下に何か紙が置いてある。 なんだろう。 そう思って見てみると、丁寧な字で〈宮下さんへ〉と表紙に書いてあった。 俺は、終わったと思った。 絶対星宮からだ。 まぁ、そう決まったわけじゃない。 誰からかわかってないじゃないか。 まだ決まったわけじゃないって。 そう心に言い聞かせて、裏を見た。 〈星宮琥珀〉終わった…。 今度こそ終わった。 まさかバレてた? いやいや、内容が昨日のやつとは限らない。 もしかしたら小学校のときに流行った他の人から来た告白ドッキリかもしれないからな。俺は現実逃避をした。 でも〈宮下〉や〈拓海くん〉でもない。 大抵の人は、その2つの名前で呼んでくる。〈宮下さん〉って呼ぶのは、星宮しかいない。 ってことは、本人からか…っ。 まぁまぁ中を見るまではわからないからな。とりあえず中を見てみよう。 〈お話ししたいことがあります。  今日の放課後、校舎裏へお越しくださ   い。〉 いやこれ絶対バレてるじゃん。 終わった。 なんか今日終わった事案が多い気がする。 いや元はと言えば星宮からの手紙だけど。 どうしよう。 慌てているとチャイムが鳴り、担任が来た。 「ホームルーム始めるぞ」 その一声で、クラスメイトは続々と席に着き始めた。 よし、行こう。 何がどうなってもいい。 行って見ないとわからない。 そう決めた俺は、きちんと授業を受けた。
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