2人だけのヒミツ

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2人だけのヒミツ

放課後になった。 いざ、決戦の時! いや決戦ではないけど。 俺は足早に校舎裏へ向かった。 どんなことを言えばいいのか、そういうのは後回し。 ただ校舎裏へ急いだ。 校舎裏に着くと、星宮らしき人の背中が見えた。 俺が一歩近づくと、彼女は気づいたらしく振り返った。 彼女の紺色の艶のある紙がさらりと揺れた。 「お待ちしていました。宮下さん」 やっぱり、彼女は花が咲いたかのように笑った。 俺はそれを見て、体をこわばらせた。 彼女は俺の様子を見て、自身の笑みを消した。 「単刀直入に聞きます。あなたは昨日、校舎の4階での出来事を見ましたか」 さっきとは打って変わって、獲物が目の前にいる猫のような鋭い目付きになった。 俺は何も答えなかった。 俺の様子を見て、星宮は 「質問を変えます」 と言った。 「私のこのような目を見ましたか」 星宮は自分の目を手で一度隠したあと、その手をどかした。 どかした後の目は、普段の黄色の目ではなく、()()()()()()()。 あの時のように。 多分質問口調だけど、ほぼ確信しているのだろう。 俺は無駄に抗うのをやめて、正直に答えた。 「あぁ、見た」 そう俺が言うと、星宮の目は普段の黄色に戻っていた。 「そうですか」 星宮ははぁとため息をついたあと、とんでもないことを言い出した。 「あのような…人形を祓うことを、()()()()()()()()()()」 ん?あのようなこと? 理解するのに10秒かかった。 「……えぇぇぇぇぇ?!できない、そんな  の!」 すると、星宮は言った。 「それが私の家のしきたりなのです」 「家?星宮の家ってすごいとこなのか?」 星宮は視線を下に落とした。 「そうです。私の家、星宮家は人形…前宮下さ  んが見たものです。それを祓う人形祓い師と  いう仕事をする一家です。私の家の他にも、  桜乃家・新海家・松風家という人形祓い師  の一家が存在します。それぞれの家に家訓が  あり、私の家、星宮家には『初めて人形を  祓っているところを見た人をパートナーと  し、それ以降はその人と仕事をする』とい  うものがあります」 なるほど。それが俺ってことか。 「でも……私は宮下さんの意見も尊重したいです。これは、とても危険な仕事で命に関わるので…」 どうしよう。 でも、多分身体能力の高さも必要になるよな。 俺は身体能力が高い。 だから大丈夫だと思う。 この身体能力の高さが、人の助けになるのならいい。 「わかった。やる」 星宮は目を見開き 「本当にいいのですか?本当に、よいのですか?」 「あぁ」 すると、星宮はほっとしたような顔になって、 「よかったぁ」 と小さな声で言った。 「なぁ、星宮」 「はい。なんでしょう」 すこしこわばった顔で言った。 もしかしたら、声が震えていたかもしれない。 「あのさ、俺のこと拓海でいいよ。名前」 星宮は目を丸くして、朗らかに笑った。 「わかりました、拓海さん。でしたら、私の  ことも琥珀と呼んでください」 えっ?いいのか? 「そうすると友達みたいになってしまう」 また星宮は…琥珀は目を丸くして不思議そうに首を傾げた。 「友達ではないんですか」 「……っ」 俺はその顔がツボにハマって笑ってしまう。 「なんで笑うんですか」 顔を赤くしながら琥珀は抗議してくる。 笑いの波が過ぎ去ると、俺は 「よろしくな、琥珀!」 と言い、片手を差し出した。 琥珀は変な感覚でこそばゆいようで、顔を赤らめていたが、手を差し出した。 「こちらこそ、よろしくお願いいたします」 こうして、俺たちはパートナーになった。
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