危機

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昼休みになると、陽奈が腕をつついてきた。 ちなみに、陽奈は俺の席の右隣、琥珀は1番後ろの窓側の席だ。 「なに?」 陽奈はちらっと琥珀の方を見てから、俺に目線を戻した。 「昨日星宮さんとなんかあった?」 うわっ、1番聞かれたくない相手に聞かれてしまった。 終わった。 どうやり過ごそう。 実はあの後、琥珀に『このことは誰にも話してはいけません。そもそもこの家業自体関係者以外は知られていないんですから。ヒミツですよ!』って釘を刺されたんだよな…。 どう答えよう。 どう答えたら1番いいんだろう。 「えぇっと…あのですね、ハプニングが起こ  りまして」 「ハプニング?」 「そう!ハプニング!」 よし。 この調子でいけばなんとかなりそうだ。 「こ…星宮の後を昨日つけてたじゃん?」「うんうん」 「階段のところで星宮がつまづいて落ちそう  だったんだよ」 基本的に琥珀は美人で弱いイメージがあるからこれ効くんだよな。 「ふむふむ」 「で、助けた。これだけ」 「へ――」 我ながらいい出来だ。 嘘はあんまりつきたくないんだけどな。 これは必要なことだからしょうがない…と思うことにする! 「なーんだ、面白くないの」 「面白くなくて悪かったね」 いやお前は面白さを求めてたのかよ。 最低だな。 「じゃ、うちは友達んとこ行きますわ」「ん」 1番聞かれたくない相手からの追及、なんとか乗り切ったぁ。 死ぬかと思った、マジで。 ん? ちょっと待てよ。 これが続くの? クラスメイト全員に話し終わるまで? 流石にそれはマズイって。 注目される→付きまとわれる→身体能力いいのがバレる→ジ・エンドって……最悪じゃん! 今度こそ終わった。 そう俺は思った。
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