巡る思い

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巡る思い

「進路相談に乗ってもらってるんです」  橘は小さな声でそう言った。  受験を終えて大学生になった卒業生にこれから受験をする橘が進路相談をすること自体はそんなに不自然なことじゃない。何なら今年の卒業生は最新情報の宝庫だ。最適な相談相手ともいえる。   だがなんで吉岡なんだ? 後藤と湯浅は京都に行っちゃったし、小島たちは推薦だからそもそもセンター試験を受けてないと言われればそりゃそうなんだけど……吉岡はパソコン部でも何でもないんだぞ。  モヤモヤをかかえながらも、目の前にいる攻撃力ゼロの橘に対して俺は何も手出しができない。  これはもう、最強防具の効果を信じるしかない。  そう腹をくくった俺は「そうなんだね。」と軽く答えてこの話を終わらせた。  田代たちに合流した橘を横目にとらえながら、俺はぼんやりと考えを巡らせる。  先走るなよ、俺! 吉岡はしっかりしているからな、本当に進路相談をしているだけなのかもしれないじゃないか。  だけど、今日遅くなると聞いて橘はどうするんだろう? それでも駅に行くのかな?   時間がずれると伝えたにもかかわらず、もし今日駅で二人が会うようなら橘は間違いなく吉岡に会うために駅に行っているってことになる。  でも焦るな、俺! 吉岡にはお店で受け取ったらすぐに指輪をつけるように指示してある。  今日の吉岡は防具を身に着けた状態で駅に降り立つはずなんだ。
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