憤慨ハルちゃん

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憤慨ハルちゃん

 驚きの隠せない俺に、吉岡は答え合わせをしてくれる。 「悪い人だとは思ってないですよ? チタンのリングを勧めてくれたところまではいい営業さんだなと思ってました。でも最後、私のいないところで先生にエンゲージリングを買わせようとしてきたじゃないですか。抜け目ないなと思って!」 「えっ? あの即日持ち帰れるって言ってたダイヤの付いた指輪のこと?」   「そうです。高価なものは学校に持っていけないからいらないってちゃんと言ったのに。  あのリング、27万円もするやつだったんですよ! 先生が『給料三ヶ月分を覚悟してたって』言ってるのを聞いて、それなら売りつけられると思ったんじゃないですかね?」   「27万!? 値札なんてついてなかったのによくわかったね?」 「お会計の間、そばに張り付いてるのもなんとなくいやらしいかなと思って少し離れて売場のショーケースをのぞいてたら、一つだけ商品がなくて値札だけになってたんです。『あれ?』っと思ってたらこっそり松平さんが先生に売りつけてるのが見えたんで、慌てて止めに行ったんですよ!」  さすが吉岡、よく見てたな! でも松平さんの勧めてくれたリングは確かに素敵だった。俺としてはすごく魅力的に感じたんだけどな。 「吉岡が喜ぶなら、全然予算内だけど?」  恐る恐る提案したらバッサリと切り捨てられた。 「喜ばないです。あんなのもらっても困るだけです!」
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