密室恋愛 下巻

事の真相

　会話が途切れそうな雰囲気を察して、私は倉田さんにさっきの疑問をぶつけてみた。
「さっきチラッと聞こえちゃったんだけど、倉田さんって、広瀬くんと付き合ってたの？」
　一体いつから？　広瀬くんよけのために湯浅くんを利用して勉強会まで開いてもらったって言うのに、全部私の勘違いだったのかと思うとなんだか急に気恥ずかしくなる。

「私たちのキューピットって、吉岡さんかも！」

「えっ！？」
　突然私の名前が倉田さんの口から出てきて驚いて固まる。
そんな私を見て倉田さんはケラケラと楽しそうに笑った。

「なんかさ。匠が吉岡さんと付き合ってるって勘違いした桜子たちが怒って匠をつるし上げたんだよ。それを何とかしようと思って企画したのが文化祭のロミジュリクッキーだったわけなんだけど、そのロミジュリクッキー企画の最後に匠から告られて付き合うことになったんだよね」
　倉田さんは一息にそう説明してくれた。

　んんっ、つまりあのとき広瀬くんが私にちょっかいかけていたのは事実で、それが周囲に『私と広瀬くんが付き合ってる』っていう誤解を生んで、その誤解を倉田さんが解こうとして、結局広瀬くんは倉田さんと付き合うことにしたってこと？
　広瀬くんの中でこの数か月間に起こった心の移り変わりが意味不明すぎる。

「倉田さんはそれでいいの？」
　思わずこっそり聞いてみると、倉田さんはちょっと声を落とした。