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焼肉奉行
20人の男子が焼肉に群がるさまはまさにピラニアの捕食シーンのよう。
焼きあがったそばからお肉が消えていく。
倉田さんは広瀬くんに呼ばれてスミレさんのところに行った。
湯浅くんのお父さんにご挨拶してきたいけれど、ここから見ている限りあのお父さん絶対に焼肉奉行だ。
焼肉網の上のコンディションはすべて把握済み。どの位置のお肉が食べごろに焼けているのかを見極め、ベストコンディションのお肉をトングで引き上げる。その鋭い眼光は肉の焦げを一切認めない。
今、焼肉奉行に話しかけるのは愚策。もう少しみんなのおなかが満たされて肉の消費ペースが落ちるころを狙った方がいい。
そんなことを考えながら立っていたら、湯浅くんが声をかけてくれた。
「吉岡さん、ここ日陰だからよかったら座らない?」
誘われるまま湯浅くんと後藤くんにむきあってパラソルのついたベンチテーブルに腰を下ろす。
「ほら、そこのレディーにこのお肉を届けてきて」
湯浅くんのお父さんに渡されたお肉を持って、小柄な黒髪の男の子が私たちのテーブルに来てくれた。
「ありがとな、橘。お前も座れよ!」
後藤くんに声をかけられた橘くんは遠慮がちに私の横へ腰かけた。
「橘はパソコン部の部長なんだ。湯浅の後継者だよ」
後藤くんが気を利かせて私に橘くんのことを紹介してくれる。
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