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陰の橘と陽の後藤
「橘って動画編集とか、もともと得意だったんだよな? 将来映像の仕事とかって興味あるの?」
大人しそうな橘くんに後藤くんが話を振っている。自分からは話せない後輩に水を向けてやる後藤くんはやっぱりコミュニケーション能力が高い。
「得意というか……先輩たちみたいな専門知識とかは全然なくて、ユーチューブの配信とかに少し興味があって少しかじってる程度なんですけど……」
うつむいて誰とも視線を合わさずものすごく自信なさげにしゃべる橘くんに、3年前の宇佐見先生が重なって見える。
「配信者かぁ! いいじゃん。面白そう!」
後藤くんは本心からそう言っているのが伝わってくる。でもそれを聞いた橘くんの表情は暗いままだ。
「先輩たちって京都の大学で本格的に映像を学ぶんですよね? それって、将来的に職業にするとかそういうことですよね?」
橘くんの質問に、後藤くんは迷いなく答える。
「そう。俺は湯浅と一緒に映像の世界で食っていく!」
眩しい! 後藤くんもどちらかといえば陽の住人! 広瀬くんや倉田さんほど言ってることが意味不明ってわけじゃないけど、後藤くんの思考も私の及ばないところがたまにある。
「ちょっと、羨ましいです」
橘くんの言葉に今度は後藤くんが首をひねる。
「羨ましい? 橘も今から京都狙う? お前まだ一年だし、十分対策できるんじゃない?」
この後藤くんの返しは少し的外れな気がする。おそらく橘くんの話は京都の大学のことじゃない。
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