密室恋愛 下巻

普段づかい

「あまり高額なものを普段から身につけていたら、お金持ちだと思われて襲われたり、下手したら駅で拉致されたりするかもしれませんよ？」

「なんだって！？　そんなの本末転倒じゃないか！！」

「学校で盗まれても嫌ですし、普通のペアリングにしましょう。その方がナチュラルに彼氏持ちアピールできますって！」

「ああ、防御力というのはそういうお話でしたか！！」
　松平さんが会得したとばかりにうなずいた。松平さんは椅子に座りなおし、さっき俺たちが書いたお客様カードに目を落とした。

「それならブランドのペアリングぐらいがちょうどいいかもしれませんね。普段使いで毎日身に着けるものなら、シルバーよりもチタンをお勧めします。チタンはアレルギーを起こしにくい素材でして、初めてアクセサリーを身に着ける方にも安心してご使用いただけますよ」
　そう言って、松平さんは純チタンのペアリングをいくつか出してきてくれた。

「まだ学校に通われるということでしたら、石のついていないものの方がいいでしょう。汗や水にぬれても変色しにくいですし、錆びませんので普段のお手入れは柔らかい布で軽くふき取るだけで大丈夫です。指輪をつけたまま手洗いやアルコール消毒をしてもらっても問題ありません」
　まさに普段遣いにはもってこいの条件だ。吉岡は興味深そうに松平さんの説明を聞いている。