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「チタンは金やプラチナに比べて希少性の低い金属ですので、転売してもお金になりません。しかし刻印サービスもありますし最近では結婚指輪としても高い人気を誇っています。一番の売れ筋はこちらの王道の甲丸リングですね」  吉岡は松平さんが勧めてきた指輪を見て即答した。 「これがいいです」 「シンプル過ぎない?」  メタリックに光るそのリングを手に取ると、金属とは思えないほど軽くて、なんだか不安になる。 「毎日使うものだから、シンプルな方がいいんですよ!」  吉岡は満足げにそう言った。  こうして俺と吉岡は純チタンのペアリングを購入した。  すぐに持ち帰れるかと思ったら2週間後になるらしい。  給料3か月分を覚悟していたら、二本で税込み29040円だという。なんだかちょっと物足らない。 「給料三ヶ月分って聞いてたのに30000円でお釣りが来るだなんて。大丈夫かな?『こんな安物しか買えない彼氏より俺に乗り換えない?』なんて 変な男に言い寄られたりしないだろうな? それよりここから2週間、防具無しで学校に行かせるのかぁ。しまったなぁ。もっと早く用意しておくべきだった。」  ブツブツと呟いていると松平さんが最初に見せてくれたダイヤのリングを持ってサッと俺の隣に寄ってきた。
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