褒賞の報償としての報奨

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褒賞の報償としての報奨

 ようやく俺の心とも折り合いがついて、吉岡と向き合う余裕が生まれた。ふと見れば、吉岡はフロアマップの案内板を見ながらあれこれ思い悩んでいる。 「まだ12時半なんでレストラン街は混んでいるかもしれませんねぇ。フードコートなら座れるのかな?」 『絶対に失敗しない初めてのデート~彼女に突然フラれないための注意点100~』という本にはデートの最後にという項目にこう書かれていた。 『どちらか一方の買い物にひたすら付き合っているだけでは、片方はあまり楽しい時間を過ごしたとは言えません。一度自分のショッピングに付き合って貰ったら、その次の店舗や次回のデートでは相手のショッピングに付き合うと言った「交代制」を行うのも手段のひとつです。  相手が特に見たいものが無い…という場合には、食事やお茶の時間を「相手の報奨の時間」としてみましょう。相手の好きなものを食べに行く、「付き合ってくれてありがとう」とお礼の言葉をかけると言った「報酬」を与えることで、相手はあなたに付き合った時間を無駄とは感じなくなるはずです』    俺にとって吉岡と一緒にいられる時間は全て「褒賞」だから、俺は吉岡に付き合ってもらった分の「報償」をしなきゃいけない。  物欲のあまりない吉岡にとっては、この『食事やお茶の時間を相手の報奨の時間にする』という案が最適なんじゃないかな?
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