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運命の相手
俺が吉岡と付き合えたのは本当にラッキーなことで、いくつもの奇跡が重なり合った結果だった。それらの奇跡をひとまとめにして運命って呼ぶのかもしれない。
結婚式とかで「お二人は運命という赤い糸で固く結ばれていた」なんていうけれど、実際には決められた未来なんて一つもない。
運命の赤い糸って組紐みたいなものなんじゃないかな? ってふと思う。一本の紐に見えるけど、実はそれは何本もの糸が編み込まれてできている。
赤い糸に仕上がるまでの過程では二人の間にいろいろな出来事があり、いろいろな選択肢が発生する。それぞれが選択肢を自分で決めていって、最終的に組紐が作れたカップルが結婚に至る。
途中で絡まってしまったり、切れてしまったり、他の糸が紛れてしまうと組み紐は完成しない。
ごめんな橘、お前にもきっとこの先の人生で一緒に組紐を編んでくれる相手が見つかるはずだ。悪いが今回は涙を呑んでくれ。たとえかわいい教え子が相手だったとしても、吉岡だけは譲るわけにはいかないんだ。
俺はキリキリと痛み出す胃をそっとスーツの上から抑えた。
これは誰も悪くない。俺と付き合っていなかったら、もしかしたら橘の恋は叶っていたのかもしれない。だがすでに吉岡は売約済みなんだ。吉岡が愛想をつかして俺を捨てない限り、この関係性が変わることはない!
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