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雪。何歳になってもワクワクするものだ。だから今日は早くに家を出た。ちらつく雪を横目に今日もペダルをこぐ。何度も何度も同じように。何度も何度も。いつも通っているのに。いつも君とすれ違うのに。これ以上の関係になれないのは自分に勇気がないからなのだろうか。
今日は遮断機が開いていた。だけど君はいた。ちょうど自分と同じ時間にこの踏切を、今、渡っている。
今しかない。今しかないんだ。声を出せ。
「あのっ!」
カンカンカンカン。
一切、空気を読まない踏切の音。僕と彼女はお互い反対側へと急いで進んでいく。
振り返らなかった。彼女はどうだったのだろうか。思い切りペダルを踏みつけた。今日は寒いけど熱い。熱い熱い。いっそのこと暑くなってくれ。
だけど。声を掛けたあの時。彼女は僕の方を見てくれた。目もあった。
そして何より一歩踏み出せた。何も変わっていない。だけどそれでいい。今日は何かが変わった気がした。何も変わっていなくとも。
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