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未来と癸が住む世界、明日。十の島国が存在し、十干と呼ばれる十人の天がいる。空は天のみが行き交ってよい場所であり、空には天の使いである天竜が飛び交っている。
スイセイ人の水の弟である癸が統治する水色は他の国とは掛け離れた場所、しかも断崖絶壁の上にある孤島で裕福ではなかったが『嘘一つない誰もが笑う幸福の国』と呼ばれていた。人族と妖怪族が暮らし、数十年前までは妖怪族が人族を襲うこともあったが今はお互いを助け合い笑い合い仲良く暮らしている。
水色は他の国からも干渉はされることはなく平和で独自の文化を築いていたがここ数か月、二つの出来事が起きていた。
一つ目は若い女性だけが失踪していること。
二つ目は人族が血を抜かれた状態で必ず高い場所で発見されるという出来事である。
癸と癸の使いである天使と呼ばれる未来が人里離れた森の中で空を見上げている。樹頭には腹が突き刺さった人の亡骸がある。亡骸には必ず首元に大きな牙の跡が残され血が全て抜かれている。そしてこの出来事が起きると亡骸の周りを烏が鳴きながら飛んでいるのが目撃されている。
「妖怪の仕業じゃないと断言できる」
「わかっていますが、どうやって証明をすればいいのでしょうか」
「わからない、けど。ここ十数年、人族と妖怪族でいざこざは起きていない。妖怪も平等に扱われ、娯楽というのを覚えたから親愛なる隣人である人族を悲しませることなんかしない」と未来は黒く長い髪を靡かせながら深い海のような瞳を光らせる。
「気持ちはわかりますが、今の状況では妖怪族を調査するしかないでしょう。口先だけで何を言っても無駄です。有言実行あるのみです。ということで未来、ここからはお願いできますか」
「ああ、わかっている」
「よろしくお願いしますね、私の天使」
「その呼び方は鳥肌が立つ。普通に名を呼べ」
癸は未来と同じ深い海の色の瞳と長く青い髪を靡かせながら未来を見つめ微笑む。癸は雪のような白い手を差し出し、未来はそっと手をのせる。
「うふふ。仕方がないですね。癸の天の使いである天使、未来よ。天である我が願いを叶え給え」
「我が天である癸様の仰せのままに」と未来は胸に手を当てながら頭を下げる。
癸は何もない空間に水の球体を貼り付け、その球体を握って押すと透明な扉が現れ開く。癸は未来に微笑みながら手を振り扉の中に入っていく。未来は立派な装いから庶民が着る服に着替え、男性から女性の姿に変化をして町へと向かう。
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