七分咲き -春休み7日目-

1/2
前へ
/21ページ
次へ

七分咲き -春休み7日目-

昨日の夜、陽向に言われたことを思い出して、勉強もせずいろいろな大学のホームページを見まくっていた。前までは私の方向性と違うと見向きもしていなかった大学に、キラキラとした魅力を感じた。昨日は久々にぐっすり眠れた。 さあ、今日は桜祭りだ。近くの河川敷で行われる。桜はまだ満開じゃないけど、屋台がいっぱい出ていて、毎年とても賑やかだ。去年は行けなかったけど今年は楽しめる気がする。それに、高校生になって新しく買ったのに一度も着られていなかった浴衣の出番だ。ここの桜祭りは浴衣で来る人も大勢いて、駅から降りてくる人々の半分は浴衣を着ている。陽向も浴衣を着てくるらしいけど、普段韓国アイドルをしている人のの浴衣姿なんて簡単には想像できない。 そんなことを考えていたら、後ろから肩をたたかれた。振り向くと、陽向の人差し指がぷに、って私のほっぺたに当たった。なんかこのやりとり、ドラマで見たな。 「待った?」 「ん、今来たとこ」 って横を見たら、かっこよすぎて、陽向に後光が差しているではないか。いや、逆光なだけだ。でも、太陽光まで味方につけるかっこよさだった。歩く偶像(アイドル)。って、こんなにオーラ出てたら見つかるんじゃ。 「ひなた、そんなに顔出してたらファンに見つからない?」 って聞くけど 「人多いし、大丈夫でしょ」 としか言わない。そんなこんなで人の多い屋台ゾーンに突入したとき、HI:LIGHTのうちわを浴衣の帯に差した中学生二人組を見つけた。 「やばいよ、ひなた。ファンいるよ。」 って言ったら、 「よそ見してたら、はぐれるよ。」 って手をつながれた。週刊誌に撮られたらおしまいだー。あ、中学生こっちみた。まさか、気づかれたか。何か言ってる、あの人かっこいいね~、ってよかった気づかれてない。ドキドキした。肝心の陽向は気づいてないようだ。ドキドキしただけ損かよ。にしても、IN:LIGHTって身近にけっこういるのかも。IN:LIGHTっていうのはHI:LIGHTのファンのことで、HI:LIGHTがファンの日常を明るく照らすよ、っていう意味らしい。人気者だ、サンアは。 で、私たちはどこへ向かっているのかって?私も分からない。ただ今、陽向に連れられている真っ最中だ。そのとき急に陽向が止まったので、私は陽向の背中に激突した。痛いな、もう。 「どうしたの?」 って聞くと、 「いちご飴。有名ないちご飴の店が来てるって知って、売り切れる前に買ってあげたくて。いちご好きって言ってたから。」 って。あの時ぼそっと呟いたくらいだったのに、覚えてくれてたんだ。うれしい。 「けっこう歩かせちゃったよね、ここ座ってて。」 ってベンチに座らしてくれた。気遣いまでできるのがすごいところ。同じ人類として尊敬する。 買ってくれたいちご飴を食べながら陽向にお礼を言う。 「ありがとう。あと、いちご好きって言ったの覚えてくれてたのうれしかった。」 「喜んでくれたならよかった。」 って自分用に買っていたチョコのかかった超甘そうないちご飴を頬張っている。やっぱり甘党なのかな?
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加