七分咲き -春休み7日目-

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お祭りの定番屋台ゲームと言ったら、やっぱり射的でしょ。陽向に言ったら金魚すくいでしょ、って返されたけど、射的の屋台に連れてきた。 「あのウサギのぬいぐるみ、おうかに似てる!」 っていわれたのでどっちがそれをとれるか対決することにした。陽向はなぜか渋ってたけど。最初の陽向のターンでその理由が分かった。射的が壊滅的に下手だ。 「こういう系のゲームは昔から苦手だから。」 って、陽向は意外なことが苦手だ。打って変わって私はどうでもいいようなことが得意だったりする。陽向が全球使ってもとれなかったぬいぐるみをいともたやすくとってしまった。残った球は隣のちびっ子にプレゼントした。ぬいぐるみは陽向に渡す。 「はい、ぬいぐるみ。私だと思って大切にしてね。」 って言ったらウサギのぬいぐるみをぎゅっと抱く陽向。この構図案外かわいいね。 その後も食べ歩き、遊び歩いた。午後6時くらいになると日が沈み出して、桜のライトアップがはじまる。今日はお祭りだから帰る時間は少し遅くなると家には伝えてあるから、ゆっくりとライトアップを楽しめる。けっこう暗くなってきて、ライトアップされた桜が際立つ。 「きれいだよね!」 って少しテンションも上がる。再び屋台からは少し離れたベンチに座って、桜を見上げる。私の肩に陽向がもたれかかってきた。 「少しだけ、こうしてていい?」 陽向の桜色の髪が近づく。陽向の匂いだ。香水だろうか。陽向は 「桜も綺麗だけど、今日の月、いつもより綺麗」 って、月に手を伸ばしている。 「月…。」 そういえば、HI:LIGHTのグループロゴも漢字の月をイメージしてるっていってたし、月好きなのかな? 「月は世界中誰でも自由に見れるものの中で一番綺麗なものだと思ってる。」 そうかも。 「練習で疲れるとよく月を見て、ファンと繋がってるって感じて頑張ってた。最近は月を見る時間もろくに無かったな。」 って寂しそうに言う。 「私も月好きだよ。太陽ばっかり注目されるけど、眩しく照らしてくれる太陽も、優しく照らしてくれる月もどっちも好き。例えば、『MOON』は月みたいに優しく背中を押してくれる感じ、『dazzling』はキラキラしてて勇気をくれる曲みたいな?」 私はそういえばと思い出して続ける。 「いいこと教えてあげる!太陽光だけじゃなくてね、月の光でも虹って架けられるんだって!奇跡みたいな確率らしいけど…。」
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