すぐ戻るから、動かないで

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すぐ戻るから、動かないで

 蝉が鳴きはじめ、雨が上がったことを知る。  私はベッドの上で、眩しく白いカーテンを見る。  次に目を向けたのはカレンダー。  7月16日に、赤い丸がついている。  そう、今日は私の誕生日。  なんだか長い夢を見ていた。  ベッドサイドのテーブルに、メモが一枚置かれている。 「すぐ戻るから、動かないで」  これを書いた人を思い浮かべると、まだ寝ていた方がいいのかなという気持ちになった。  彼が来る前に私が起きていたら、喜ぶだろうか、残念がるだろうか。  とりあえずベッドから下りて、カーテンを開ける。  強い日差しに濡れたアスファルト、何本かの街路樹と箱のような白い建物。  ジージーと鳴く蝉は、どの木にもいそうだ。  雨上がりは蝉の声にも元気があるように思える。暑い中に歌うのは私だったら避けたい。  遠くに虹が見える。うっすらと架かる七色のアーチ。7月16日が七色の日で虹の日だと教えてくれたのも彼。虹のたもとでは亡くなったペットたちが元気に走り回っているという。
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