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さて、何から話そうか
私は、そもそも猫だった。
虹のたもとにいた身だった。
雨上がりの日、アンドロイドの起動スイッチが入る。
禁忌的という人も多いが、この新たなペットビジネスは、一定の需要を持って、特定施設入居を条件に法整備も行われた。
私たち元ペットのアンドロイドは、箱のような白い建物の中で暮らし、一年ごとの承認制で元飼い主との面会交流が認められる。申請すれば、施設で共に暮らすこともできる。特に梅雨時の同居希望者は多いと聞く。
この部屋の外には、担当職員がいるだろう。
その人の立ち会いの下、彼と対面し、懐かしい話に興じる算段だ。
私たち意識を持ったアンドロイドを施設に閉じ込めることを批判する人も多いが、雨上がりの日以外は電源が切られるため、自分が不遇と思うことはない。
それに私たちの意識というデータは、個人使用目的で任意に書き換えられる。
私の彼への恋心や記憶も、どこまで真実か分からないが、AIペット税は年30万と高く、そもそも任意書き換え可能な単なるデータという扱いのため、反対派も過激な抗議ができない仕組みである。
私は自分自身が自治体のいいように使われていると知りながら、雨上がりの日が待ち遠しい。
雨上がりは大好きな人と会える大切な日。
この気持ちが猫だった私の本心かどうかはあまり関係ないのだ。
もう間もなく彼がこの部屋に来る。
さて、何から話そうか。
〜END〜
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