職場のモテ男×職場の地味男

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「俺たち同期で、席も隣同士なのに職場では全く話さないだろ?」 「そ、そうだな。」 それは、日下部が雲の上の存在だから。 俺なんかが気安く話しかけていい相手ではない。 それに、周りの女子も許さないだろう。 「毎日、弁当持ってきてるだろ?」 「え、なんで知って...」 「それは分かるだろ。隣同士なんだし。」 「そうだったな...」 見られていたなんて知らなかった。 俺はこっそり食べているつもりだったから。 「いつも美味しそうだなって思って見てた。」 「有り合わせだよ。前の日のおかずも入れるし。でも、卵焼きは必ず入れる。」 「もしかして、坂下の手作り?」 「そうだけど。」 「すごっ。俺なんて料理は全く出来ないから、昼飯はコンビニばっかだよ。」 意外だった。 なんでも完璧にこなす日下部にも苦手なことがあったとは。 「作ろうか?」 「まじ!?」 しまった。俺は何を出過ぎたことを言ってるんだ。 「やっぱり、今のなしで。」 「えー、食べたい。」 初めて知った。 日下部は甘え上手な一面をあるようだ。 その顔を見せられたら、断われないではないか。 「俺のと同じもので良ければ...」 「それがいい!」 「分かった。月曜日に持ってく。」 「楽しみだな。」 俺は嬉しそうな日下部の横顔を思わず見つめていた。
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